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瀬戸内海で遊ぶ

久しぶりの瀬戸内海。

しんと穏やかな時間が流れる。

 

20代のとき、瀬戸内海で遊んだ。

知り合いの知り合いあたりが持っているヨットで風に吹かれた。

 

夜の浜辺で釣った魚を焼いて宴会に参加した。

 

当時は、まだ引っ込み思案で、でも自己顕示欲が強くて、まだ細くて、でもエネルギッシュな女子だったから、それはもうたくさん遊んだ。

 

小さなころから波の声を聞いて育って、いつかはこの海の向こうに行くぞと妄想した。

 

結局日本海を渡ることもできず、とりあえず瀬戸内海まで出てきた。

いやいや瀬戸内海だって海賊がいたんだぞと心の中で威張ってみるが。

 

だけど、瀬戸内海に留まることもできず、5年でその地を後にする。

 

きっと誰もが、人生のうちでいちばん感受性が強い時というのがあって。それは別に子どものころでもなく、思春期だけでもなく、わたし自身は瀬戸内海で遊んだときが最も過敏だったんだけど。

 

今でもふと波に揺られて寝ているように思うことがある。

風の中に、潮の匂いを聞き分けることがある。

 

あの暗くて冷たい海の温度が30度になると聞くと、本当に本当に心が痛い。