「お寺」で思い出した。
写真とはまったく関係がないし、今となっては昔の話。
奈良のお寺さんでお香会をすることになった。
お香のメンバーはみんな仲良しなので、ついでに京都も観光して楽しい旅にほくほくだった。
奈良のお寺さんで会を実施する算段をしてくれた仲間が、先に行って待っていた。
楽しいばかりの私たちは、予定よりも遅れて宿に入った。
きっと一人で待っている間、もんもんとしたんだろう。
せっかくさまざまな段取りをして待っているのに、なかなか来ない私たちにイライラしていたのかもしれない。
彼女は不機嫌だった。
あるいは、そのお寺さんの周りにいた「気」がよどんでいただけだったのかもしれない。
夕食のとき、メンバーのひとりが急に叫び声をあげた。
不機嫌だった彼女の後ろに、お不動様が見えると、こわいこわいと。
先生の指示で、厨房から塩をもらってきた。
こわがっているメンバーに、その塩が手渡される。
少し落ち着いたメンバーは、この塩を持っておいてほしい人が二人いると言う。
そのうちの一人が私だった。
あのときのなんとも言えないこわさの感触はまだ覚えている。
広いお部屋だったけれど、大きな香炉にお香がたかれているのもかえってこわかった。
結局、その晩はほとんど眠れずに過ごした。
ときおりあのときの仲間と思い出話をすることがある。
あれは一体なんだったんだろうね、と。